昭和世代、仮面ライダーよりも前に制作され、一世を風靡したのはウルトラマンでした。
巨大特撮ヒーロー物の中でも異例のヒットをし、「巨大ヒーロー=円谷プロ」となっていました。
それから10年もしないで仮面ライダーが放送され、次いで戦隊ものが放送されると、巨大ヒーローものから等身大ヒーローものにブームが移行し、仮面ライダーも戦隊ものも昭和を代表するヒーローになりました。
そんなウルトラマンですが、現在放送されているウルトラマンZに関しても、その前のシリーズに関しても、全てにおいて仮面ライダーや戦隊よりも視聴率は低く、2%に届いていません。
では、なぜウルトラマンは視聴率をとれなくなってしまったのか、私なりの考察をしてみようと思います。
あくまで一ファンの考察なので、楽しんで読んでくれるくらいにしておいていただけると嬉しいです。
- 昭和シリーズのウルトラマンの視聴率が減った理由
- 平成初期シリーズのウルトラマンの視聴率が減ってしまった理由
- ニュージェネレーションヒーローズの視聴率が減ってしまった理由
- 過去作の力を借りるのは視聴率と関係があるのか
- 過去作を使いまわしている、怪獣の新規が少ないのは大きな理由になるのか
- まとめ
昭和シリーズのウルトラマンの視聴率が減った理由
では、早速ですがウルトラマンがどうして視聴率が低くなってしまっているのかを私なりに考えていこうと思います。
ここからの視聴率に関しては、以下の記事を基にして話を進めていきます。
方向転換を繰り返したから
ウルトラマンの放送は、75年にウルトラマンレオの放送が終了してから79年まで放送がストップしていますが、その間も仮面ライダーはシリーズが放送されていきました。
が、それも長くは続かず放送が終了。
79年に仮面ライダーはスカイライダーが放送を開始し、ウルトラマンはザ・ウルトラマンの放送が開始されますが、アニメーションでした。
ウルトラマンの製作費は、仮面ライダーの倍以上と言われていたりするので、一作品作るのにもお金がかかります。
初代ウルトラマンの視聴率は、このブログでも紹介しましたが、最高で40%台を記録していました。
対して初代仮面ライダーの最高視聴率は30%台とされているので、圧倒的にウルトラマンが勝っていたわけです。
ちなみに視聴率が逆転してしまったのは、ウルトラマンレオの時代からです。レオが放送していた74年には、仮面ライダーXが放送されていました。
レオの平均視聴率は10%台、最高で17%にはなっていますが、仮面ライダーXは最高視聴率は22%でした。
なぜここまでの差が開いてしまったのかというと、その原因は「方向転換」にあると思っています。
ウルトラマンAまではM78星雲・光の国出身のウルトラマンがテレビで活躍していて、ウルトラマンという存在は、それなりに強い部分を前面に押し出していました。登場すれば大体において勝利を収め、華麗に去っていく、という王道の展開が約束されていたのです。
が、ウルトラマンレオはそもそも他のウルトラ戦士とは生まれた星が違い、戦闘スタイルもどこかたどたどしい。
しまいには1回では勝てずに敗北し、訓練という苦行を経てやっと勝てる、という今までの方向とは別の作品になったのです。
スポコンブームがあったことが要因なのですが、これが受け入れられなかったのと、ウルトラマンが負ける、というストーリー展開は、子供にとっては衝撃だったのです。
初代ウルトラマンは最終回にゼットンに敗れますが、それまでは何とか勝利してきました。
セブンもたびたび負けるものの、そのほとんどは勝利を収めているので、観ていても安心感があります。その他の昭和シリーズもほとんどの戦いには勝利しています。
が、レオに関しては1話の時点で倒しきれないどころか、その後もことごとく負け続けていきます。
また、客演としてダンが出てきますが、そのキャラクターの違いが大きな批判を呼んでしまうことになるので、これも視聴者を離れさせてしまう原因になってしまったんだと思います。
怪獣ブーム時代の衰退
怪獣ブーム自体の衰退も大きな要因になっていると思います。
第二次怪獣ブームと言われているのは、71年~74年までとされていて、その間に制作された作品はどれもヒットを飛ばしていました。
ウルトラマンもその一つで、この時に制作されていた作品はどれも平均視聴率は15%以上でした。がレオの放送が始まった時にはブームが去ろうとしている段階だったため、視聴者の興味がなくなってしまったんですよね。
ブームが去ってしまうとどうしても視聴する人は減ってきますし、初代ウルトラマンを見ていた10代の子供も20代になってしまっているため、観なくなってしまったんだと思います。
この波に大きく阻まれて視聴率が苦戦してしまったのではないかと思います。
平成初期シリーズのウルトラマンの視聴率が減ってしまった理由
平成シリーズは、96年に日本産のウルトラマンティガの放送が開始されるまで、海外と共同で制作していたグレートとパワードがありました。
グレートとパワードの放送は95年ですが、80年代にターゲット層だった子供は、すでに小学校の中学年くらいになってしまっているので、観てなかった人も多いでしょう。
さらに、日本での制作ではなかったため、テイストの違いが映像にも表れてしまい、うけつけなかった人もいたと思います。
私も放送当時は観ていたものの、どこか違和感を感じていましたしね(今は大好きなシリーズですが)。
ただ、ウルトラマンティガの放送が始まって、一定層の視聴率を獲得しますが、平成以降のウルトラマンは視聴率10%を超えたことはありません。
逆に仮面ライダーに関しては、平成初期のクウガとアギトに関しては10%超える視聴率を記録した回もそれなりにありました。
差が開いてしまった原因は、「認知度」と「広告」だと思います。
ウルトラマンは円谷プロがすべての制作を行っていたわけですが、あくまで一つの企業がすべてを担っていたため、広告に大きな費用をかけることができていませんでした。
対して仮面ライダーは東映が制作を行っていますが、配給自体も東映が行っていけるだけの実力と費用をかけることができたので、広告を大きく打つことができていました。
ティガは当時デビュー間もなく、人気もそれなりにあったV6の長野博さんが主演をされていましたが、それでも視聴率は振るわず。でも当時の円谷プロにしてみれば大ヒットと言えるものでした。
仮面ライダーに関しては主演がオダギリジョーさんなので、こちらもつかみはばっちりです。
仮面ライダーの認知度は87年にブラックが放送されていたり、映画で作品が制作されていたりしたので、認知度はばっちりでした。
ウルトラマンに関しては、ほとんどの制作が止まっていて、認知度が下がっていた上に、広告を大々的に打つことができずにいたので、結局視聴率には結びつかなったのでしょう。
平成二期以降の視聴率の減少と失敗
平成三部作はそれなりにヒットしたといえるものではあったものの、それから数年間テレビ放送は終了してしまうことになります。
それから時間をおいて制作されたウルトラマンコスモスは、2001年からの放送でした。
仮面ライダーはこの間も制作が続いていて、むしろ2000年からは毎年放送されるようになるので、認知度の差はどんどん開いていく結果になりました。
また、怪獣ブーム自体も完全に復帰していないため、ウルトラマンというコンテンツ自体に興味を失っている、または、世代的に放送されていなくて知らなかったという世代になってしまっていました。
コスモスはある程度のウルトラマンの基盤は残しつつも、怪獣を保護するという「退治する」方向とは別の方向に向いてしまったので、すっきりしない展開が多くありました。
これも視聴者を置いてけぼりしてしまう原因になってしまい、結果視聴率減少につながってしまったのではないかと思います。
プロジェクトの大きな失敗
視聴者を逃してしまった大きな原因は「ウルトラNプロジェクト」から始まるネクサスの物語です。
作品自体の難解さと、子供に理解しがたいストーリーや各種武器、見せられるレベルを超えてしまったようなグロテスクな映像の数々など、大人でさえも無理と言われてしまうような展開が続いたことで、より視聴者を遠ざけてしまう結果になってしまいました。
その為、これ以降ウルトラマンの視聴率はガクッと一気に下がってしまうことになりました。そして円谷プロ自体も制作が思うようにできず、苦戦する結果になってしまいました。
ウルトラマンを初めてみるのがネクサスである世代もいたため、ウルトラマンがこういう作品なんだと思われてしまったのも大きな失敗だったのかもしれません。
ニュージェネレーションヒーローズの視聴率が減ってしまった理由
ウルトラマンメビウス以降、長期の新作の放送がなかったこともあり、時代は完全に平成仮面ライダーと戦隊ものに独占されてしまう結果になりました。
そのことでウルトラマン自体が忘れされられてしまうことになってしまいました。
そんな中で始まったウルトラマンギンガでしたが、放送されていることを知らない人も多かったうえに、分割放送であったため前回の話を覚えていない、といった事態を招いてしまっていました。
さらに、新しく打ち出したコレクションアイテムの存在も、真新しさがなかったこともあり、この点でもライダーに後れを取る結果に。
何とか毎年放送されるようになったはいいものの、半年クールでの放送になっているので、放送していない期間は過去作の再編集版や再放送をする、という形態になっています。
これも1年かけて物語をみせていく他の作品との格差が埋まらない原因かもしれません。
TBS制作での放送ではなくなってしまったのも大きな原因
ウルトラマンは、もともとTBSで放送されていました。
が、今はテレビ東京系列での放送になってしまっています。テレビ東京系列だと、放送されていない地域も出てきてしまったり、放送時間が違ってしまっていたりするので、必然的に観られる地域が限定されてしまいます。
そうなると必然的に視聴率も上がりずらくなりますよね。関東圏に住んでいる人だけが視聴率を測定する装置を設置しているわけではないわけですから。
苦戦を強いられてしまうのはしょうがないのかもしれません。
過去作の力を借りるのは視聴率と関係があるのか
ニュージェネレーション以降のウルトラマンは、過去作のウルトラマンの人形やメダル、カードといったものを使用して変身します。
つまり過去作のウルトラマンが、間接的に映像に出てくることになるわけです。
これが視聴者に受けないというのを理由に視聴率が減ってしまったのではないかという意見もありました。
が、私はこの意見は少し違うと考えます。ただ全部間違いとも言えません。
過去作のウルトラマンの力を借りて戦うのは、何も平成の作品だけではありません。
返ってきたウルトラマンでは、マンとセブンから授かったウルトラブレスレットを駆使して戦っていきますし、タロウはウルトラ兄弟という存在を確固たるものにしたシリーズなので、結構過去のウルトラマンが出てきます。
Aでも助けを借りていたことがありますし、レオでもありました。
他のウルトラマンの力を借りていることがそのまま視聴率と関係しているというわけではないと思います。
過去作と今のウルトラマンとの差は「過去作のウルトラマンがアイテムとして必ず出てくること」でしょうね。
では、何が問題なのかというと、変身するために必要なものに過去のウルトラマンが描かれていることで、どしても「他のウルトラマンの力を借りないと変身できない」というイメージが刷り込まれてしまって、それが遠ざけている原因である、ということですね。
アイテムを売るために作品を作っている、子供がターゲットとなっていて、ある程度の高い年齢層の視聴者をないがしろにしてしまっている、と思われてしまっているわけです。
ここは今後の課題かと思います。
過去作を使いまわしている、怪獣の新規が少ないのは大きな理由になるのか
ウルトラマンと仮面ライダーの大きな違いは、過去作のものを流用しているかどうかです。
仮面ライダーは、常に新しいものを作るという意味では、過去作のものは使いまわしをしていません。
対してウルトラマンは、過去に出てきた怪獣を数多く登場させています。つまり、真新しさが少ないのです。
これを良しととらえるかダメだと捉えるかで大きく分かれてしまっていることも視聴率が伸びない理由かもしれません。
既存怪獣の登場は、賛否が分かれるところかと思いますので、もし仮に本編に登場する怪獣がすべて新規だとしたら見るのかと言われると、多分難しいでしょうね。
というのは、ウルトラマンマックス以降、本編全てにシリーズオリジナル怪獣だけ出るっていうのが作られていないからです。
マックスにもキングジョーやバルタン星人などの人気怪獣は数多く出ていました。ですが、今よりも視聴率はありました。
頻度としては確かに今の方が高いですが、扱い方はそこまで変わっていません。
なので、これだけを視聴率低下の理由にしてしまうのは、ちょっと乱暴な気がします。
ただ、原因の一つと言えるかもしれませんね。
まとめ
結果的に視聴率の低下は、顧客の獲得が上手く行っていないことが原因なのではないかと思います。
失ってしまった視聴者をどうやって取り戻していくのか、新しいものを提供していくことができるのか、が最大の課題かもしれませんね。
ウルトラマンは、一作品を制作するのに莫大な費用がかかるため、量産するのが難しいコンテンツになっています。
その為、できるだけコストを抑えつつ、どうやって新しいことをしていくか、というところに重点を置かれているような感じがします。
人件費を削減するなら、有名な俳優さんを起用しなくても作れるウルトラギャラクシーファイトシリーズを定期的に展開したり、新規怪獣の造形にかける費用を抑えて、その分特撮に力を入れていたりするのはそこが理由です。
ただ言えるのは、毎週毎週映画並みの特撮を見せてくれて、ワクワクを与えてくれるっていう意味では、ウルトラマンはコンテンツとしては唯一無二ですし、どこにも負けていないと思います。
そして、前作の反省は必ず新作では改善してくるので、常に「新しいものが最高である」を実践してくれています。
ファンへのサプライズもたくさん盛り込んでくれるので、決して弱いコンテンツではないのは確かです。
視聴率はそこまで取れないかもしれませんが、良いシリーズであることには変わりないのです。